全国有数の炭鉱のまちとして栄えた美唄市。各炭鉱から紫檀を運び出すために鉄道が敷かれ、沿線には多くの駅ができた。炭鉱全盛期の昭和30年ころ、三船福太郎氏が焼き鳥屋「三船」を開店。美唄焼き鳥のルーツが始まった。

その焼き鳥は、1本の串に鶏のレバーやハツ、砂肝やキンカンなどのモツと鶏皮、モモ肉などが刺され、間に地元産のタマネギが入っているのが特徴。炭鉱労働者ばかりでなく、地元住民にも愛された味は、弟子をはじめ孫弟子、親族らに継承されて美唄や岩見沢に広まっていった。

今回、取材に行ったのは美唄でも老舗焼き鳥店のひとつである「元祖美唄焼き鳥・福よし本店さん」。創業は昭和30年年代とされ、今の店主の城野紀代子さん（82）が前経営者から引き継いだのは平成2年で48歳のときだったそうだ。現在はのれん分けした「福よし」が札幌市内に3店、岩見沢に1店あり、いずれも人気店となっている。

本店では平日の午前中から、持ち帰り用の各種焼き鳥の注文が殺到。従業員がフル活動している。焼き作業も大変だが、仕入れたに鶏を解体して湯がき、串に刺さす作業などはの仕込みは朝の4時からスタート。複数のベテランが連携して伝統の味を守っている。店での飲食は午後4時から。串焼きのほか、来店者の8割が注文するという「味噌ホルモン」も人気メニューのひとつ。土鍋で煮込んだホルモンが柔らかく、酒の肴に持って来いの逸品だ。

城野さんは「日々忙しく過ごしていますが、伝統の美唄焼き鳥を守っていくのが自分の使命。今後もお客様に喜んでもらえる店にしていきたい」と話している。