〈第14回〉ペリネイタルロス
ペリネイタルロスは流産や死産、新生児の死亡、人工妊娠中絶などの妊娠出産に関わる喪失を指す言葉です。
子どもを亡くすことは大きなできごとですが、残念ながら社会的には軽視されがちで、1人の人間の死と扱われづらい現実があります。また、妊娠したことや、流産・死産の経緯について知られていなかったり、話すことができなくて周囲から認められづらい、公認されないグリーフでもあります。
グリーフの影響として、ショックを受けたり、どうして元気に生んであげられなかったのかと自責の念が起こることがあります。出産による身体の変化も起こります。赤ちゃんのことが頭から離れなくなったり、元気な赤ちゃんの声を聞くことが苦痛に感じる。眠れなくなったり、普通の生活に戻ることに不安を感じる人もいます。これらはあくまでも限られた例です。ここに当てはまらないものも多くあります。これらの影響は誰にでも起こりうる自然な反応です。起こったことで自分を責めたり、乗り越えなければいけないものではありません。
周囲の人から次は大丈夫とか、早く忘れなさいと声をかけられて辛かったという声も聞きます。声を掛ける側としては良かれと思って励ましていても、その言葉がかえって本人の苦しみを増してしまうこともあります。
身体的な変化を実感していた母親と、そのような実感がない父親ではグリーフの現れ方が異なるとも言われています。私自身あるエピソードを思い出します。流産で子どもを亡くしたある葬儀で、母親は子どもを失った悲しみで泣いているのに、父親は冷静にしている。子どもが死んだのに悲しくないのかと母親が父親を責めた。僧侶が、父親は父親なりに苦しんでいると思うと話すと父親が泣き出した。これはひとつの例ですが、パートナーで互いにわかりあえないと感じることがあります。
赤ちゃんのためにしてあげたいことがあれば、周囲に遠慮せずにしてあげるとよいと言われています。沐浴させる。体に触れる。家族で共に過ごす。思い出の品を残す。また、小さな産着を提供している支援団体もあります。ペリネイタルロスや周産期グリーフケアという言葉で検索してください。