第15回|自殺とグリーフ
このコラムを書いている数日前に、2024年の自殺者数の確定値が発表されました。全体の自殺者数は2万320人。減少傾向にあって1978年の統計開始から過去2番目に少ないそうです。一方で、小中高生の自殺者数は529人と過去最多となりました。
最近、リヴオンという団体で「いのちの授業」を学校や教育機関に展開していく講師認定を受けました。いのちの授業とは、自殺予防教育の一環で、自分で自分を大切にする力を育み、子どもたちが生き続けられる社会を目指す活動です。
交通事故対策として、自転車の乗り方や横断歩道の渡り方を学ぶ機会は学校でもあります。一方で、これだけ子どもの自殺者数が増えている中で、自殺予防教育が行われる機会はそう多くはありません。
いのちの授業では、生と死について考え、グリーフワークについて学んだり、つらくなった時にはどうしたらいいのか、セルフケアを学びます。子どもの死因の1位が自殺である現状を話して、その原因を私たちの価値観にたずねます。たとえば、人に迷惑をかけちゃだめが、人を頼ることはだめになっていないかと考えます。そして、弱さを出せる強さについて伝えています。
子ども向けの授業ですが、人を頼るのはよくないとか、頑張れない自分に意味が見いだせないとか、価値観によって苦しむのは大人も同じであり、大きな問題だと感じます。
また、自殺は残された人にとっても大きなグリーフとなります。悲しみや不安が強くなったり、夜眠れなくなる。人間関係が壊れる。なぜ?という答えが出ない問いかけや、どうして気づけなかったのかと自分を責める人もいます。
場合によっては亡くなった理由を周囲に隠すこともあるでしょう。故人の死について誰にも語ることができずに、一人で抱え込んでしまって追い込まれてしまうこともあります。同じ自死遺族同士で聞きあう、自死遺族のための分かち合いの会が地域やインターネットで開催されています。保健所などでも相談を受け付けています。自分の気持ちを誰かに聞いてもらうこともグリーフと付き合っていく大切な手段です。人に会う気が起こらなければ、文字に書き出してみるのも有効です。